マウイのことならマウイの達人
無料マップ遊ぶ食べるショッピング掲示版よくある質問現地情報
サイト内検索



責任者紹介

マウイ島無料マップ
スヌーバジャパン
スヌーバジャパン
GO

海の向こうの消防事情 スイス編
国際消防情報協会 企画調査員 神谷 早苗

歴史・習慣

世界で一番美しい首都と言われるベルン(1848年スイス連邦の首都となる。)を持つ国スイスは、中央ヨーロッパのアルプス・ジュラ山脈に囲まれ、溶けた氷によって作られたホワイトグリーンの水がアール川を経て、宝石のような湖を満たし、訪れる観光客にやさしく微笑みとやすらぎを与えてくれる。

1648年神聖ローマ帝国から独立し、永世中立国(*1参照。)で国際労働機関、国際赤十字社の本部がある。代表的なスイス料理はチーズ料理と淡水魚料理。ベルン消防局の危険物課長にベルンで最高のレストランに招待され、スイス白ワイン、パイクという淡水魚のムニエル、ワインチーズフォンデュを御馳走になったが、何とも言えない貴族的でおしゃれな味が今でも忘れられない。

ベルンは、中世都市の姿を今に伝えるヨーロッパ随一の歴史的町並みで、スイスの都市ではベルンだけだが、町全体としてユネスコの世界文化遺産に指定されている。

街を歩くと、まるでおとぎ話の世界に入ったような雰囲気で、所々に11の歴史的噴水(1545年頃建造)があり、その噴水の頭には、スイス民話の昔話に出てくる主人公達が陽気に飾られており、それぞれの物語の内容が5カ国語で青銅版に説明してあった。各物語の内容が、日本昔話の仏教の教えに大変似ていたため特に興味をそそられた。

スイスは、人口800万人(1993年スイス人口統計資料)で、そのほとんどがスイスジャーマンと呼ばれるドイツ語を公用語として話し、その他、地区ごとにイタリア語、フランス語、ロマンシュ(ラテン語に近い。)語、英語が使われている。そのため警察、消防、救急の指令センター職員のほとんどが、3カ国語以上を当たり前のように使いこなし、現場の無線交信でも3カ国語で情報交換する場合もある。

20歳になると、健康な国民は徴兵制度のため、6カ月の軍隊教養を受ける。その後、毎年3週間づつ40歳までに最低計300〜400日の兵役義務があり、その期間はすべて有給休暇として雇用者は給与を支払う義務がある。

国民の大学進学者以外のほとんどは、高校卒業後、国立の職業専門学校(無料)に通い、何らかの特技とライセンスを身につけて社会に出るため、失業率は低い。消防士もそうした課程を得て成るため、消防署の設計、建設、内装工事、修理などすべて職員で行う。

私が訪れたときもマッサージ機能のある立派なシャワーと、ボディドライヤーの設置工事が職員の手によって行われていた。もちろん、消防車両の点検、修理、改造をはじめ、呼吸器、ヘルメット、防火衣、制服などの必要な有りとあらゆるものの修理も行い、それに必要な調整の機械や道具が署内のワークショップ(作業場)にあり、そこで職員達が、まるで、白雪姫と7人の小人の小人達のように、せっせと手際よく働いていた。また、私が逢った消防士達は人格的にもトータルバランスが取れている人が多く、有名な精神医学者ユング(*2参照)が主張した自己実現派(ユング派)の成長過程のもとに人生を構築している様に思えた。

消防職員の心の問題について

ベルン消防局危険物課長のハウプトマン・シャッフアー氏は、消防業務の他に、国立放射性物質および危険物研究所の職員として15年、室長として5年のキャリアを持ち、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所放射能漏洩事故の際には、スイス国際救助隊の先頭に立ち、自ら現場に向かい放射能汚染状況を調査し、救助隊員達への被爆予防を行い、安全確実に任務を達成した栄誉ある経歴の持ち主である。

氏とレストランで食事をしていて、会話の中心となったのが、消防士をはじめとする、危険作業に従事する労働者達の心の問題についてであった。というのは、氏自身がチェルノブイリの事故現場にて、目に見えない放射能という特別な物質を相手に、被爆の心配、部下や仲間の心配、任務の達成、気象条件による放射能汚染の心配など、危険かつ困難な調査を長期間継続しながらも、自分の心の中で起こる様々な心理的変化を痛切に感じ、自己心理分析を行うと同時に、部下の肉体的な安全管理の他、心理的なコントロールを行い、部下とともに安全確実に任務達成に成功した経験からであった。

氏はさらに、それらの経験を、哲学的に通常の消防現場にスライド思考していく中で、同じ様な立場で現場活動をしている職員達の個人面談を行い、対等な立場になって話してみたところ、それらの職員は年間に何百回も危機に直面するような現場で働いており、心理的負担を多く持っていることがわかった。そこでこれらの職員を、上司としてどう助けていくか、アドバイスしていくかを研究されている。なかでも氏はオブセッション(強迫観念)について研究されており、火災現場や救急救助事故における危険予知とそれに伴う隊員達の自己強迫観念神経症について4時間にわたり丁寧に説明を頂いたので抄訳し紹介したい。

強迫観念および強迫観念神経症について強迫観念とは、一般に考えまいとしても、絶えず考えや感情が頭にこびりついて、抑えようとしても、それらが心を占有して頭から離れない症状で、強迫観念神経症とは、不合理だとわかっている観念や行為が自己の意志に反して現れ、これに不快な感情を伴う一種の神経症である。

消防の環境でわかりやすく説明すると、火災現場で要救助者を救出するために屋内侵入し、煙や熱気などが充満し始め、特に視界がなくなってくると、自分の安全環境の構成比が逆転するため、閉所恐怖症に似た恐怖感が最初に心の中に無意識に生まれる。

2番目に、それでも心の一方では救助者としての使命感が働き、恐怖心に打ち勝って現場活動を継続しようとする忠誠的な義勇心が生まれる。

3番目には、自分が恐怖心を持っていることや、疲れていてもその疲労を他人に悟られまいとする、プライド防衛心が生まれる。救急現場においては、患者の血液や吐物、汚物を接触しながらの現場活動継続、また伝染病患者搬送後の感染への心配をはじめ、興奮状態、酩酊状態などの精神不安定患者対応時の救急隊員自身の感情抑制など、非日常的な環境の中で任務を遂行し、目的を達成しなければならない責任感が心の中に無意識に存在する。

以上のような強迫観念が、様々な形でいろんな角度から職員を刺激するが、そもそも人間の性格の一部はこの強迫観念、つまり何かを限界まで押し進めるという心の働きで成長し、また、成り立っている。これを建設的方向へクリエイティブ(創造的)に考えを持ち、成長していくのは多分な利用価値があり、逆に持つ機会が少ない人よりも成功する人が多い。

しかし、一方においては、妄想など思い詰める心の状態の中で、自分の達成しようとするものがあまりに大きかったり、責任が重かったりすると、それらが反作用となって、逃避しようとする働きが生まれる。さらに、破壊的な部分が生まれて、最終的には、果たして自分が創造的であるかないか、この仕事に向いているかいないかなど、深い苦悩に直面する。

そこで、これを乗り越えていくという大変困難な作業を避ける代わりに、酒、タバコ、ドラッグ、夫婦間以外の性的快楽、ゴシップ話(他人のうわさ話、悪口)、カラオケ、漫画本読書、浪費などの逃げ道を作り、また、慣習化していく。しかし、ここで誤解しないで頂きたいのは、これらの逃げ道は決して悪い(罪悪)という意味ではなく、強迫観念神経症にならないための予防法として、個人が自ら心のバランスをとるために、自然治癒的に趣味として行うには効果がある。だが、場合によって、別の強迫観念神経症を生むため、注意をしなければならない。言い換えると、どれも適当な内には薬としての作用があるが、慢性化し、のめり込むと必ず落とし穴がある。わかっていて、時には、他人に指導する立場にあっても、過ちを犯してしまうこともある。

しかし、難しいのは、どこかでタガをはずして、安らぎを持てるオアシスを見つけなければ、自分の心のバランスが取れない。ストレスのしわ寄せをどこかで延ばす必要がある。また、意識的バランスはきれいに整っていても、悩みが深ければ心身症に成っていく。また、こういう神経症状態になるのはごく普通のことで、ちょっとストレスが高くなれば抑鬱的になることがあるが、これも当たり前の行為であり、あまり心配はいらない。ただし、これが慢性的に続いてなかなか治らない人は、心理療法などの治療が必要になってくる。

ここで、ひとつ理解していただきたいのは精神病と神経症の違いである。たとえば、自分の部下や同僚が過去に神経症になった職員としても、決して精神病ではないので、特別な目で見る必要はない。神経症とは心理的に了解が可能であって、自覚症状もあり、本人の環境要因が大きく関係している。そのため環境要因(家族環境、職場環境などまわりの社会環境全体の中での個人の存在バランス)さえ上手く整えば比較的に簡単な治療で済む。ところが精神病は本人が自覚症状をあまり持たず、また、なかなか心理的には了解できない面があって、治療もある程度薬物を頼らなければならず、その薬物も病気を治すという意味ではなく、症状を軽くするために用いる。また、入院の必要性があることも少なくはない。神経症の場合は、不安にしても不安の状態が軽く、抑鬱状態も軽い。精神病は、完全に現実とはかけ離れた次元のところで不安になり、幻覚や幻聴などが起こる。ところが、精神病でない普通の人でも、幻聴や幻覚が出ることもあり、分類するには総体的な精神状態を診断しなければならない。

強迫観念神経症予防法について

では、どうしたらよいか? シャファー氏の予防法とアイデアを紹介したい。

その前に、どうしてこのような話になったかというと、実はシャファー氏は純粋なドイツ人で、20歳までドイツのヒトラー独裁政治、一党支配の名残のある国家主義的、全体的主義社会で暮らし、思想統制による人権・自由の抑圧を感じながら育った経歴があり、大学生時代にスイスを訪れ、その自然がもてなす開放感と自由を求める社会に触れ、感動し、ベルンに移り住んだという過去の“抑圧”の思い出が、コンステレート(言語連想)し、強迫観念神経症にまで発展してしまった。

シャファー式予防法と対策

・何々らしく。または、こうでなければ恥ずかしい。といった、あやふやで比べ要のない指導の仕方を避け、余計な心理的プレッシャーを与えない。

氏は幼少の頃から、ドイツ人らしく恥ずかしくない行動を、または、ドイツ魂を持て。と家族から言われる度に、一体どういう人間像がドイツ人なの?ドイツ魂って何?などの疑問を持って育ち、結局は人権と自由抑圧の国民コントロールのための教えに頭を悩ましていた。

氏は消防組織もこれに似通った性格を持っていることに気付き、消防職員らしい行動を、また、恥ずかしくない態度を、と言った何とどう比較しようもない指導方法ではなく、わかりやすくハッキリとし、職員が余計な強迫観念の連想を抱かないように、知恵とユーモアで、“なるほど。ああ、わかった。”と自意識をくすぐる指導をするということを強調していた。

・神経症になっている職員には、とにかく話を良く聞き、結論的指導を急がない。また、  自分の過去に同じ様な経験があり、自分の場合上手く解決したからと言って、同じ手段を無理押ししない。また、悩みが深い場合は素人治療を避ける。

 要するに本人が自分の心理的環境を再秩序化しなければ、神経症は治りにくく、その自己治癒の過程の中で、今まで構築してきた心理環境のアウティング・アウト(*4)という破壊的行為があることを認める。ただし、アウティング・アウトは個人によって行動が異なるため、許容範囲から極端にはみ出さないような家族、同僚の理解と協力が必要。

  ・職員が自己開発セミナー、マインドセラピーといった、一過性の刺激の強い団体や新興宗教などの、心理作用の強いものにのめり込まないように指導する。

  1939年フランスのある大学で実験的に始められた能力開発法の研究が、マーケティング・ストラテジー(市場戦略)の上でビジネスとして成立してしまい、世界中、特に先進国の都市近郊を中心として幅広く爆発的に発展し、多くの自殺者を生んだ。

現在でもアメリカでは、精神的に不安定な青少年や都市で働くストレス性の高いビジネスマンを対象(ターゲットとして)にセミナーが開かれており、極端な場合、集団自殺や社会を切り放した集団生活を行っている。これらの受講者や信仰者マインドコントロールされているため、誰がなんと言おうと聞く耳を持たない。またこれらは、マルチ商法的要素を持っているところも多く、受講者は大金を払い、作為的に用意されたランクを獲得するため、さらに金を注ぐ。また、指導者からは、受講内容を他に漏らさないようにと口封じをされる。元に戻るには、専門家の長期的な指導と団体からの隔離が必要。性格として、あくまでもビジネス的要素が強く、たとえ、不信感を抱いても、総ての質問に対して答えが用意されているため、普通の人は簡単に説得されてしまう。そして、さらにのめり込んでしまう。また、社会的に地位の高い人も、ストレス比が一般の人よりも高いため注意が必要。これらは、精神的に危害をもたらし、市民生活を破壊する団体と定義し、現在世界で約3000団体が存在し、そのうち約200団体が日本にて活動を展開中。(アメリカ・シチズンズ・フリーダム・ファンデーション1980年資料およびカルト・アウエアネス・ネットワーク1992年報告書より)

消防事情について

ベルン消防局職員の個人装備は非常に高価で、高性能なものが使われている。たとえば、防火衣はゴア・テックス性で重さ約6kg、1着10万円。ヘルメットは、ギャ激bト社製F-2000型ヘルメットで1個約5万円、山林火災用ヘルメットは、同じくギャレット社製F-3000型ヘルメットで一個約3万円、ブーツもゴアテックスインナー付きで約2万円、無線機も個人貸予で一人にひとつずつ持っている(値段は不明)。さらに、登山用ザイルロープ10ミリロープ30m×2(ストレッチタイプ及びノンストレッチタイプ)約1万円、アルミカラビナ5個(約1万円)。そして、極めつけはスイスが誇るビクトリノックス社製ナイフ(5得)皮ケース付き4000円で、各人が普段から腰のベルトに所持している。もちろん、消防車は10台の内7台がベンツで有名なメルセデス社製!!さすが、金持ちの国スイスと呼ばれるだけあって予算が隅々まで行き届いている。

スイスはクレパス式洞窟が多く、各国から夏期休暇で訪れる初心者の冒険家たちが行方不明となり、必ず毎年5以上は遭難レスキュー出動をするそうである。これに備え、消防局では毎年シーズン前の4月〜6月に3回程度、実際に洞窟を使った捜索救出訓練を行っている。その他、蜂取り部隊、鍵の110番隊などユニークなサービスも行っている。非番日の職員たちのスポーツは、カヌーでの急流下り、レイク・フィッシング(湖での魚釣り)、トレッキング(山歩き)など自然を利用した健康的な過ごし方をしている人が多い。

おわりに

シャファー氏から話していただいた強迫観念の内容説明は、非常にユーモアがあり、食事をしながらも楽しく会話ができた。今回の内容は、偶然にも日本にいた時に本誌8月号で紹介させていただいた「救急隊員のストレスを防ぐ」のパート2のような形になったが、実際に世界中の各都市で同じ様な問題が起こっており、また、増加している。結局、人の心理に定義というものはなく、いくら世界的に有名な心理学者といえ、人の心を心理的にまた、科学的に分析は出来ても結論は出せないことを感じた。心理学に興味のある方は、日本人では、河合 隼雄氏の「こころの処方箋」などが非常にわかりやすく身近に書かれているため参考になると思う。抄訳について、私のユーモアが乏しいせいか、文が少々堅くなってしまったことをお詫びしたい。

*1、国際法上、他の諸国家間の戦争に関係しない義務を負い、かつ、その独立と領土の保全とが他の諸国家によって保証されている状態。広辞苑より

*2、ユング(1875〜1961)は精神分裂病者への心理療法的接近を初めて試み、フロイト(*3)の精神分析学の発展に寄与したが、その後、独自の分析心理学を創始した。無意識を個人の無意識と普遍的無意識に分け、普遍的無意識をとらえる原型は幻覚や神話などに見出されると主張。さらに自我と区別して、無意識な自己の概念を明らかにし、自己実現の過程を重視した。著書「人間のタイプ」「人間と象徴」他。日本大辞典より

*3、フロイト(1856〜1939)オーストリアの心理学者、精神医学者。自由連想法による精神分析療法を創始し、病理学の分野ではヒステリーや神経症の研究から心的防衛機制を解明した。著書「精神分析入門」で無意識の心理学としての精神分析理論を確立。さらに精神構造論、力動論、治癒論を展開し、今日の精神分析各派の礎を作った。他に「夢判断」などの著書がある。日本語大辞典より

*4アクティング・アウトとは、心理的に何かから抑圧することを通じて、自分の内部 に作り上げた秩序を破壊する行為。神経症患者の自己治癒の過程の中で、再秩序化する ために無意識に行われる。破壊行為の後は、フォーマットという心の地ならし行為が行 われ、心理的環境の再構築が開始される。一般にアクティング・アウトの事例としては、 軽い症状として、イライラ、他人への八つ当たり。また、中間的症状には社会からの逃 避、家族からの逃避、離婚など。重い症状としては自殺に近い行為にまで至る。理想的 な破壊行為として、スポーツを利用する方法がある。たとえば、バッティングセンター やゴルフの練習場でボールを思いきり打つ、サッカーボールを思いきり蹴る、柔道、剣 道、空手などで相手に攻撃を加えるなど。しかし、これらは本人が好きでなければ、返っ て逆効果にもなるので注意が必要。